Missionphase -5


 
 

 地下異次元への結界の扉が開き、一時間近くが経過しようとしていた。
 途絶えた騒乱の響き。戦刃の煌きと膨大な死滅が踊った広大な大地には、夢の跡のごとく静寂が広がっている。深緑の枝で天を覆った巨大樹を中心に、妖魔の世界には終息の息吹が流れつつあった。
 厳粛ですらある空気を切り裂く、乙女の叫び。
 描かれた漆黒の魔法陣の上で、真紅の聖衣を纏ったショートヘアの少女は焼かれる苦痛に痛切な悲鳴をあげていた。
 
「さすがというべきか。これほどの電撃を浴びて、身も心も屈しないとはね」

 妖魔ブリードの配下に堕ちたアザミの黒魔術の前に、ナイトレフィアは成す術なく嬲られるしかなかった。
 規格外の妖魔を仕留めるはずの巨大魔法陣が、17歳の乙女に牙を剥いて襲い掛かったのだ。
 神秘の力に守られた聖騎士といえ、六芒星の檻に閉じ込められたレフィアはあまりに無力であった。いや、そもそもこの巨大魔法陣を悠々と創らせてしまったことが致命的であったのだ。
 すぐ直前まで心の底から仲間として支えあっていた『闇巫女』アザミ。深く根ざしたブリードの種が本性を現すまで、レフィアが信頼し切っていたのも無理はない。
 
「動けまい? 『フェアリッシュ・ナイツ』の卓越した防御力がどこまでのものか、じっくり試してやろう」

 妖魔としての本性を露わにした黒髪の巫女は、薄い唇をニヤリと吊り上げてみせた。
 確信できるまでに、その顔の造形はアザミでありながら、もはやアザミのものではなかった。
 切れ上がった火焔騎士の瞳が、強い光でアザミを睨む。
 
「残念だよ・・・アザミさん、ううん、アザミ」

 シュウシュウと電撃による白煙が真紅の聖衣から立ち昇る。
 ギリ、という歯噛みの音を含んだ怒りを、レフィアは静かに言葉に乗せた。
 
「罠に嵌ったのはあたしがバカだった。けど、仇討ちの想いまで嘘だったなんて、あたしは悔しい」

「“人間”だったころの感情なんて、記憶もなければ興味もない。ただ仕入れたお前たちの情報だけは好都合なことによく覚えていてね。例えば・・・聖霊騎士は、この手の呪術に弱いとか」

 直立不動の姿勢で無防備に立ち尽くしたレフィアの隆起した胸に、黒髪巫女がビシャリと呪符を貼り付ける。
 白の梵字が踊る黒地の呪符は、意味はわからなくとも禍々しい臭気を発散させている。
 
「いぐぅッッ?!! くうッッ・・・ぐ・・・くあああッッ?!!」

「聖霊を食らう澱みの呪・・・溶かされる苦痛はさながら硫酸を浴びたよう、ってところかしら?」

 ジュウウウウゥゥゥ・・・・・・
 凄まじい白煙が昇り、溶解の嫌な音が耳をつんざく。
 呪符ごとレフィアのボリュームある左乳房を鷲掴むアザミの掌。焼きつく激痛にブルブルと揺れる胸から、ドロドロに溶けた真紅のスーツがボトボトと地に落ちていく。
 
「あがああッッ!!・・・あッ、熱いィィッッ・・・熱いィィッ――ッッ!!!」

「火焔の聖霊騎士が無様なものね。まだまだよ、この掌に余る乳房を爛れ溶かしてあげる」

「いぎいいッッ・・・む、胸がァァッ――ッッ!!! くううッ、ぐううううッッ~~ッッ!!!」

「ふふふ、最強の防御力を誇る『フェアリッシュ・ナイツ』のスーツが溶けていくわ。惨めなものね」

 溶け落ちていく真紅のスーツから、白い素肌が露呈されていく。
 いまやナイトレフィアの質量ともに揃った左乳房は、そこだけ破り取られたように外気に晒されてしまっている。中世騎士を想起させる華麗なコスチュームから、左胸のみを剥かれて責め喘がされる美少女・・・反撃不能を示す直立の姿は、陰惨ですらある光景であった。

 

カーソルを乗せると画像が変化します


 
「レフィア! そんなヤツに、なにいいようにやられてんのよッ!」

 オメガカルラの叱咤の声は、遥か上空から降ってきた。
 臍も腕も太腿も露出した過激なイエローのコスチューム。オメガのマークを胸に描いた風天使は、巨大枝にその身を磨り潰されながら、弱気の欠片すら見せてはいなかった。
 
「魔法陣から抜け出せないのは、あんたの力が足りないからよ! そいつを上回るパワーがあればきっと反撃できる!」

「・・・カ、カル・・・ラ・・・」

「くううッッ・・・うおおおおッッ・・・!!」

 檸檬色のボディスーツの中央、金地に真紅で描かれたオメガマークが輝きを放つ。
 その瞬間、小柄で華奢な女子高生戦士は、巨大枝の挟撃を純粋なパワーでこじ開けていた。
 鼓舞するつもりか。己の言葉を証明してみせることで。
 だが決して消耗が少ないとは思えぬ奥義を二度も連撃した風天使にとって、ここでの全力に余裕があろうはずはない。
 
 ギュンッッ!!
 
 黄色のケープが翻る。ポニーテールの天使が空中を急降下する。
 光を失った瞳で見上げる黒髪の巫女に、檸檬色の風が吹き降りる。
 
「愚かな小娘」

 肉に食い込む痛撃は、稲妻の速さで少女を貫いた。
 巨大樹から伸びた無数の蔓触手が、オメガカルラの四肢を網のごとく絡め取っている。
 風が踊る。切る。ボトボトと落ちる緑の触手。
 
「その気ならッ・・・お前から葬ってやるわッ、ブリード!!」

 真正面から妖樹に飛び込んでいく、ポニーテールの超少女。
 開襟のボディスーツと太腿も露わなフレアミニの周囲に、疾く、鋭い風が結集する。
 ザクザクザクザクッッ!!!
 数百に及ぶ風の斬撃が、ありったけの力で巨大樹の胴に叩き込まれる。
 ズザザザザザッッ・・・揺れる葉が紡ぐ、妖魔の悲鳴。
 
「・・・お前ではブリード様には勝てないわ。風天使オメガカルラ」

 グシャリッッッ!!!
 
 前後左右。凶悪な杭と化した何本もの枝が、檸檬色の小さな肢体に撃ち込まれる。
 胸。腹。背中。太腿。腰。
 風天使の潰れる凄惨な破壊音と、カルラの唇から噴き出した真紅の鮮血が、シャワーとなって囚われのレフィアの頭上に降り注ぐ。
 
「カルラッッ―――ッッッ!!!」

「ブリード様、まずはその無謀な小娘から始末下さいますよう」

 別の蔦触手が白目を剥いたカルラの手足に、何重にも巻きついていく。グラグラと揺れるしかない超少女が、なんの反抗も示すことなく次なる嗜虐の舞台に連れ去られていく。
 グボリと杭が抜かれるや否や、蕾を思わす乙女の肢体は、左右から巨大樹の圧倒的膂力で引っ張られていた。大の字の姿勢で空中に浮いた檸檬色の少女。真ん中から裂けよとばかり、ミシミシ、ブチッと耳を覆う戦慄の響きが宙に漂う。
 
「ぎィッッ・・・ぎああッ・・・アアア・ア・アッッ・・・!!!」

「圧倒的パワーとはこういうことを言うのよ、オメガカルラ」

「やッ、やめッッ・・・お願いッ、もうやめてェッ!! これ以上はカルラがぁッッ・・・」

「おっとナイトレフィア、お前に他者を心配する余裕などないわ」

 直立したままの聖霊騎士の背後に、吸い付くようにアザミが立つ。
 両手には梵字の浮かんだ黒い呪符。乙女の肢体に貪りつくように抱きついてきた魔巫女が、右手でレフィアの美豊乳を、左手でスコートに隠れた股間の奥地を握り掴む。
 
「ひィぎィッッ?!!」

「ここで喘ぎながら、仲間の死に様を眺めているがいい。無力な己を嘆きながらな」

 じゅうううううゥゥッッ~~~ッッ・・・!!!
 聖衣の左胸部分を焼き溶かした暗黒呪符が、今度は右胸と真紅のスコートを溶かしていく。
 焼かれ、溶かれ、爛れ、ドロドロに破れていく火焔の騎士の戦闘衣。
 焦熱の苦痛が細胞を切り裂いてレフィアの脳髄を突き刺す。だが戦乙女を苦しめるのは、痛覚のみではなかった。さざ波のごとく押し寄せる、劣情の疼き。痛痒感にも似た桃色の痺れが、こねられる乳房の先の頂点と、股間のクレヴァスに埋もれた萌芽から、間断なく下腹部の子宮に送られてくる。
 
「うああああああッッ―――ッッッ!!!! ・・・あ、あくうッ?!・・・ひ、ひぐッ・・・く、くうッ、くふうッ・・・・・・な、なにを・・・」

「感度良好のようね、レフィア。溶かされる激痛の狭間を衝いて、送り込まれる官能の津波。極度の緊張の隙をつく快楽は、無防備にダイレクトで受けてしまうだけに効くだろう? ほら、もうコチコチに固くなってきた。左手を濡らす熱い蜜はなにかな?」

 形が潰れるほど揉みしだかれる右乳房と、激しく摩擦される股間の恥丘。
 シュウシュウと白煙立ち昇るなか、聖霊騎士の清い身体が穢されていく。
 
「ぐあああああああッッッ―――ッッッ!!! や、焼けッッ・・・身体がァッ・・・焼けちゃッッ・・・ひゃあうッッ!! は、放しッ・・・そ、そこはァァッ~~ッ・・・くふうんんッッ!!」

「喚け。叫べ。喘げ。騎士が弱者であると知り、聖霊が雌犬であると自覚せよ。見よ、快楽に溺れるお前の前で、仲間のオメガカルラはもはや解体寸前だ」

 愛撫に狂乱するレフィアの上空で、檸檬色の少女戦士は大いなる『地』の力によって引き裂かれんとしていた。
 大の字に開ききった四肢には、もはやなんの抵抗も残されてはいない。
 ミチミチと不快な音色を奏でながら、嗜虐の贄と化した華奢な少女のポニーテールがガクリと力なく垂れる、

「ブリード様、遠慮なく罪深き愚者の手足を」

 ゴキッ!! ゴキンッッ!! ボグッ!! ボゴンッッ!!

 


 
 肩と股関節から脱臼の悲鳴が一斉にあがる。
 健常な関節を力づくで抜かれる悪魔の痛み。絹切る四方堂亜梨沙の絶叫が、妖魔の世界を揺るがす。
 
「トドメを。新たなる苗床に厳粛なる死を」

 穂先を尖らせた枝の槍。
 絶望的な戦力差に沈む孤立の天使に、壮絶な凶器が轟音を伴って放たれる。
 
「逃げてェッッ、カルッッ・・・くうッ、くふうッッ、んあああああッッ――ッッッ!!!」

 手姦する両手がその激しさを一気に増す。昇天を目論む愛撫の嵐と呪符の拷問地獄に、17歳の聖霊騎士の理性と肉欲が木の葉のごとく舞い踊る。グングンと高まる内圧が、若い肢体を淫欲の潮へと呑み込んでいく。
 
「レ・・・レフィ・・・ア・・・」

 切れ上がった二重の瞳が、無念の光を灯して同志の聖霊騎士に投げかけられる。
 その瞬間、開脚したカルラの股間の中央に、妖樹の槍は深々と刺し貫かれた。
 
 ごぶッ・・・ぅうううッッ・・・!!
 
 飛び散った鮮血の雨が、瞳を逸らしたレフィアにビチャビチャと降り注ぐ。
 
「二撃め」

 アザミの声に合わせるように、股間から抜かれた槍は、さらけ出されたカルラのお臍を突き刺した。
 声にならない悲鳴と、大量の吐血。
 ビクビクと断末魔に震える風天使を嘲笑うように、再度臓腑を抉った槍が乙女の肢体から引き抜かれる。
 
「げふッッ!! ゴブッッ!! ぐあッッ・・・アアアアッッ・・・」

「萌黄の風天使が血染めの堕天使に変わり果ててても、まだ息があるとはね。どうやら『フェアリッシュ・ナイツ』とは別の技術体系で、その尋常ならない生命力を授かっているらしい。でも」

「あぐうッ!! んきゅッ・・・や、やめェッッ・・・も、もうやめッッ・・・あああああッッ――ッッッ!!! そこはァッッ・・・胸はやめッッ・・・いぎィィッッ・・・だ、ダメェ・・・ダメェ、ダメェッ~~ッッ!!」

「よく見ているがいい、卑俗なる発情騎士よ。仲間の無惨な死を目に焼き付けよ。疑わしいまでにあからさまなあのオメガのマーク・・・ブリード様、カルラの弱点は額面通り、そこでしょう」

 美豊乳を握り潰す手が、萌芽と秘園の聖窟を抉る手が、一気にクライマックスへと突き進む。
 
「所詮は小娘、他愛のないもの。醜態を晒して果てよ、ナイトレフィア。そして、オメガカルラ」

 胸中央のオメガマークに、槍の猛撃が突き刺さる。
 
「うあああああああああッッッ―――ッッッ!!!!」

 全身を突っ張らせたオメガカルラ、末期の絶叫が処刑の大地に轟いた。
 同時に、立ち尽くしたレフィアの股間から透明な聖水が、凄まじい勢いで噴き出す。
 
 ぶッッしゅううううッッ―――ッッ!!!
 
 大量の鮮血と少女の潮。聖戦士たちの無様さを彩る、二種類の飛沫。
 毒々しいまでの真紅に、ポニーテールの少女が染まる。
 ズルリと落ちた小さな肢体は、なんの受け身も取れないまま、愛らしい顔面から硬い大地に激突した。
 ビクンッッ、ビクンッッ
 二度の大きな痙攣。
 うつ伏せ状態のまま、血で頬を汚した真っ白な顔が、股間から女蜜を垂らし続けるナイトレフィアに向けられている。
 
「・・・・・・ダ・・・サ・・・」

 勝ち気な少女の顔は、ほんの少し笑って見えた。
 糸が切れたように全身の動きを止めるオメガカルラ。
 切れ上がった瞳が閉じられ、生意気そうな表情は敗北の戦士のそれへと変わっていた。
 
「カル・・・・・・ラ・・・・・・」

 強制的に絶頂を迎えさせられた惨めな少女が、死に逝く少女を送る。
 「ダサい」と言い掛けたカルラの言葉は、窮地の仲間を前にして快楽に溺れたレフィアへのものか。あるいは、手も足も出ずに敗れ去った己への嫌悪か。
 ただひとつ、確実なのは――。
 妖魔ブリードの前に、火焔の聖霊騎士も萌黄の風天使も、踏み躙られるが如く惨敗を喫した。

「まずは一匹」

 もはや一滴の愛液も残っていないことを確認するや、アザミの淫手がゆっくりとレフィアのはち切れんボディから剥がれる。
 
「さて次は・・・地上に残った極上の養分を『封印樹』にくれてやりましょう」

 

 大地に穿たれた漆黒の空洞から、極大の風が吹き上がる。
 あるいは風ではないのかもしれぬ。肥大したエネルギーを孕んだ何か。“気”と呼ぶのが相応しそうなそれが、色で喩えれば白よりも黒が妥当であることを、翠玉の聖霊騎士ナイトレミーラは感じ取っていた。
 


 


——— It continues to next phase